風俗で働いてはいけない本当の理由

風俗で働いてはいけない理由として、自称有識者は「金銭感覚が狂う」「貞操観念が狂う」「まともな男女論理を破壊される」「アレな客や従業員による不測の事態に陥る」「性病の危険性」等をあげますが、ハッキリ申し上げるとソレらの問題は枝葉末節の話に過ぎません。


風俗で働いてはいけない理由は、ただ一つ「そもそも産業として成り立ってない」という点につきます。


具体的には、職業安定法、税法、売春防止法の3つをクリアーした店and/or個人は極端に少なく、税法だけとってみても2013年東京国税局調査で不正発見率87%という実態が明らかになってます。
誤解を恐れずに言えば性風俗産業は「違法な行為をすることを前提にした商売」です。
これに対しては「グレーゾーン」「国は見逃してる」等の反論が寄せられますが、実情は「黒と白はハッキリ線引きされており、国は違法行為を見逃さず摘発している」に尽きます。


ここでは、とりあえず一番風俗嬢にダメージが来るであろう税法について書いていきます。(職業安定法売春防止法についても機会があれば…)

 

「風俗をやると金銭感覚狂うよ」の本当と嘘

風俗は最初こそハードルは高いが、1度体を売ってお金を手にしてしまえば「こんなことでこんなに大金が稼げるの?」という感覚に陥ります。
そして身体を売る事がどんどん平気になり、それと同時に感覚が鈍っていきます。
時給○万円が当たり前になり、週5日拘束されても1日の給料にも満たない普通の仕事が馬鹿らしくなり耐えられなくなるのです。


…的な事がよく言われ、実際この通りなのですがコレには一つにして致命的な見逃しがあります。


それは「その金は、違法なことをしてるからこその大金」という点です。

違法とは身体売る事ではありません、税金を払わない(確定申告をしない)ことです。

 

2013年東京国税局の風俗嬢の追徴課税額平均から逆算すると、風俗嬢の平均月収は30~40万ほどです。

(これは恐らく専業にしてない方や学生等も含めた平均ですので、中央値はもう少し高くなる気がします…現役嬢の実感としては)

またGAPの角間惇一郎は風俗嬢の平均月収を約30-40万円と見積もっています。

これを「可処分所得年480万」とすると破格の大金と言えなくもないですが、キッチリ税金を払った場合の可処分所得は340万円(白色申告)ほどです。


この金額には福利厚生がつかない事や、将来のキャリアに結びつかないことを考えると、明らかに割に合わない職種と言えます。

 

つまり風俗で働くと「実は全然儲かってないのに大金稼いでる気になって金銭感覚が狂ったあげく、追徴課税(脱税に対するペナルティ)で貧乏になる」という事態に陥りかねません。


そして、上記の通り職業としてみた場合「勤務時間の融通が効く」「技量次第では若くても(若いから?)稼げる可能性がある」以外の魅力は皆無です


しかし、風俗嬢で税金を払ってる方は少ないように思えますし、事実東京国税局の調査でも9割近くから申告漏れが見つかったとの報告があります。


この風俗における税金については「風俗嬢は税金払わなくても大丈夫!」的な主張する方がおり、そういった方がよく根拠にあげるのが次の3点です。

・国は敢えて見逃しているから課税出来ない

むしろ風俗ないしキャバレーは申告漏れ金額上位職種として、国税にマークされてます。

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因みにコレを言うと「それはあくまで見せしめである」的な反論をよく受けますが、それが事実としても次に貴方が見せしめにならない理由は何処にもありません。
(また上記の表は事業所得…つまりキャバ・風俗嬢の表ですが、当然風俗店自体も法人税の申告漏れ金額上位業種としてマークされています)

(またこの金額は1年の脱税額ではなく、最大過去7年遡って出した申告漏れ金額の総計です。国税に目をつけられるぐらいの風俗嬢でも、この程度しか稼げないのが現実です)

 

・正確な金額が分からないから課税出来ない

風俗は現金商売であり、店の金銭管理もガバガバですし、そもそも風俗嬢の出勤は不定期ですし、店をコロコロ変えることも多いので正確な収入を把握するのは本人も難しいです。


が、しかし

 

「申告納税制度」である日本は「正確な金額が分からないから課税出来ない」というヤリ得を許すほど甘くはありません。
むしろ正直者がバカを見ることがないよう脱税がヤリ損になるような仕組みが作られています。


国税には何の資料がなくても「収入を独自に推測して計算し、その数字に対して課税する」権限が与えられています。
これを推計課税と言い、脱税者は通常5年、悪意(故意)が認められたり、税務調査に非協力な場合は7年過去を遡って課税されます。


具体的にはキャバ・風俗嬢の場合は住居の電気料金や水道代、HPの出勤記録、ドライバーの送迎記録、海外渡航記録、クレジットカード履歴などを調べ上げ、同業種比率(過去の同業者達の脱税記録)等を用いてヤリ損になるように総売上高・損金・課税利益を算出し税額の計算を行います。
(因みに余談ですが、国税不服審査所の資料を漁る限り、最近では風俗嬢の収入は通信費…つまりガチャから推計するのが主流のようです。←この推測が怪しくなりました。追記参照)

 

・国は職業として認めてないから課税出来ない

風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律
第二条
6  この法律において「店舗型性風俗特殊営業」とは、次の各号のいずれかに該当する営業をいう。
一  浴場業(公衆浴場法 (昭和二十三年法律第百三十九号)第一条第一項 に規定する公衆浴場を業として経営することをいう。)の施設として個室を設け、当該個室において異性の客に接触する役務を提供する営業
二  個室を設け、当該個室において異性の客の性的好奇心に応じてその客に接触する役務を提供する営業(前号に該当する営業を除く。)

7  この法律において「無店舗型性風俗特殊営業」とは、次の各号のいずれかに該当する営業をいう。
一  人の住居又は人の宿泊の用に供する施設において異性の客の性的好奇心に応じてその客に接触する役務を提供する営業で、当該役務を行う者を、その客の依頼を受けて派遣することにより営むもの

 

結論から言えば、風俗産業関係者の大半はただ「自分がまだ」摘発されてないという事実を好き勝手に解釈しているだけです。
実際は、このように法が制定されており、摘発者もいるのが現実です。
更に悪い事に、この問題は

 

つまりキチンと確定申告すればいんでしょ?

という話で済ませられない面があります。


私のツイッターアカウントはDMを解放してますが、そこで毎日「店が税務署に届け出してないけど確定申告したらどうなるの?」「店に確定申告するな!と止められてる」「店長がそもそも税金の話を理解出来ないので、確定申告に必要な書類を貰えない」みたいなDMが届きます。


「店長が税金の話を理解しない」という問題は、毎日の収支をメモ書きして税務署に相談すれば「白色申告」という形態で確定申告を受け付けてくれますが、問題は「店が脱税してるから私も確定申告出来ない」です。


例えば風俗店が税務署に何も申告してない場合、風俗嬢が申告すれば芋づる式にその店の脱税が税務署に知れ渡ることになる…という不安はもっともです。
そして風俗店の脱税率は87%ですから「風俗嬢が確定申告しても困った事にならない」店のほうが少ない計算になります。


これについて実態は「税務署は風俗店の脱税は把握してるし、そもそも公安の届け出と付き合わせれば分かるのだが、数が多すぎて全ては摘発出来ない」というのが正解に近い(この推測を裏付ける資料はありません)ので、風俗嬢と風俗店の脱税摘発は連動してないと思いますが確証はありません。


一応、2016年6月13日に東京国税局西村さんに問い合わせてみましたが「店の事情がどうあれ確定申告の必要はある。しかし脱税摘発の基準は明かすことが出来ない」の一点張りでした。


繰り返しますが、性風俗産業は「そもそも産業として成り立ってない」のです。

 

これらの問題にある背景

ここまで読んで「でも、なんで従業員や自称有識者達はこれらの事情を問題にしないの?」と疑問を抱いた方もいると思います。


その答えの一つとしては「危険性に気付かない無知な方を店の責任者(店長等)に据え、摘発されたら責任を全て負わせて、新たな責任者を指名する」…所謂「雇われ経営者」という手法が常態化してるからです。

(因みに正真正銘の有識者の会議である内閣府男女共同参画局税制調査会において、この問題は何度も議論されてます)


これに対して警察は2011年、国税は2012年に「実質経営者」という書類上ではなく、実質的に経営を指示してる方を摘発出来る概念を開発し、これを打ち壊そうとしてますが、まだまだ健全化がされたとは言えない状態です。


ある意味、このような関係者が「無知」であることを前提にした産業構造こそが性風俗産業の最大の問題と言えるでしょう。

 

追記

「なんで脱税がバレるの?」という質問ですが、答えは「申告してない金を使うから」につきます。

 

国税は銀行等の金融機関だけでなく、光熱費、家賃、通信費、海外通貨両替、貴金属売買、古物売買、不動産…etcで動いた金を開示させる権限があり、日々それをデータ化し国税総合管理システムを用いて全国の税務署とネットワークで共有しています。

またデパートやホストクラブ等で現地調査することもあり、そこで得た情報もデータ化しています。

 

こういった資料を突き合わせれば「あの学生はバイトしてないけど、生活費や学費は何処から出てるんだ?」「ニートなのに、何故ホストクラブに行けるんだ?」「月給20万円のOLが何故ソシャゲに40万円つぎ込めるのか?」みたいな矛盾が浮かび上がるという仕組みです。

 

摘発されないのは、脱税がバレてないからではなく、単に国税職員のマンパワー不足で「脱税者全員を摘発出来ない」という理由に過ぎず、脱税摘発は「バレるか?バレないか?」ではなく「摘発されるか?されないか?」の問題です。

 

更に追記

 ガチャではなく、純粋に通信費を参考にしてるっぽいです